涙のスイッチ
「おばあちゃん、ごちそうさま。ね、ジョンとお散歩してきてもいい?」


「いいけど…。外は雪が降ってるし、寒いわよ?」


「ううん。体あったまったし、ジョンと遊びたいから。行ってくるね?」


「気をつけるのよ?」


おばあちゃんの声を背中で聞き、あたしはスーツケースを床の間に移動させると、見られないようにグラニーバッグの中に大量の風邪薬と、さっきバスに乗る前駅で買ったミネラルウォーターを押し込めた。


「行ってきまぁす」


玄関のドアを閉めて、あたしは家の前で、


「おじいちゃん、おばあちゃん、ママをよろしくお願いします」


と言って、ジョンに散歩用のチェーンをつけた。
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