涙のスイッチ
「オレさ」


「………」


「入学式の日、教室で美和ちゃん見てさ、今まで見てきた女の子とは違う白さ、ってゆーか、何色にも染まってないキレイなコだなって思った」


「あたし、そんなキレイじゃない。旭くんの思い過ごしだよ…」


「そーゆートコ。美和ちゃん、自己評価低過ぎ。声出す度、笑う度、少女マンガみたくバックに花散ってるぜ?」


「フフッ…。旭くん、女の子くどく度にそんな事言ってるでしょ?」


「くどくんならもっと簡単なコ、いくらでもいるって。オレ、こんなんでもけっこうモテるし」


「なら、他の子探しなよ?」


「それがダメなんだな~。オレ、こんなに粘るタイプだったんだ、って自分でも驚くくらい美和ちゃんでいっぱいで、さ。プチストーカー状態」


「あたし…多分ダメだよ?」


「うん。きっとダメだってわかってる。けど言わずにはいられない。勝負する前にYOU LOSEって、ないだろ?だから、オレ、宮園のカレシ見に行ったんだ」


「カレシじゃ…ないもん」


「そこでさ、“うん、カレシ”って誤魔化さないトコが美和ちゃんだよな。だから僅かでも期待しちゃうんだよ」
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