涙のスイッチ
「どうしようかな…」


こんな気持ちのまま、迪也くんの試合なんて見に行けそうもない。


けど、会いたい。


会ってこの気持ちを拭えるのは、やっぱり迪也くんしかいない、って。


それはごまかし?甘え?


どんな顔で会えばいい?


どんな言葉を交わせばいい?


何を言ってもらえたら、あたしは満たされるの?


自分でもわからないくせに迪也くんに求めるのは、違う気がした。


だけど思い出されるのは、迪也くんの太くて艶のある声で。


八重歯を覗かせた笑顔で。


たくましい手で。


会いに…行きたい。


会ってあたし自身を確かめたい。
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