涙のスイッチ
人でいっぱいのホームに降り立ち、あたしは荷物を置きに一旦家へ戻り、宮園に向かった。


グラウンドには宮園以外の制服を着たギャラリーもちらほらいて、あたしはちょっと離れたフェンス脇に立ち、迪也くんを待った。


ユニフォーム姿が眩しい2チームの選手達。


飛び交う大きなかけ声と声援。


3対3で競り合う6回裏、宮園の守備がポジションにつく。


マウンドに立ったのは、迪也くん。


待っていたはずなのに、今まで見たどの表情とも違う真っ直ぐな迪也くんを直視できないのは。


まだ、あたしの中に旭くんのキスが残っているからで。


どうしようもなく心がザワつく。


キャッチャーの指示で次々と速球を投げる迪也くん。


2アウトノーラン。


バッター残り1人。


フォークボールを投げた迪也くんの投げた球はサードゴロで、1人、ファーストに塁を出してしまったけれど、次のバッターをストレートで押さえ込み、迪也くんの登板は終わった。


次の回からは先輩ピッチャーが投げ、4対3で宮園の勝ち。
< 126 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop