涙のスイッチ
───ポン


あたしの上に静かに降りた迪也くんの手。


あたしは。


醜い感情をむき出してしまったあたしはこの手を払い除ける事ができずに。


入ってしまうんだ。


涙のスイッチ。


「…っ…っ…!」


幼い子供のように声に出してわんわん泣いた。


ほんのちょっぴり土の匂いのするユニフォームの胸で流す涙は、哀しさとか寂しさとか、やっと戻ってきた安心感の結晶のようで。


流せば流す程、心が軽くなる。


人目も気にせず迪也くんはあたしの頭を撫でてくれていて。


それがとってもあったかい。


迪也くんらしい優しさに、気持ちを委ねてしまう。
< 130 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop