涙のスイッチ
走ってく迪也くんの後ろ姿を見て動き出す、胸。


いつだってあたしは迪也くんに救われる。


こんなにワガママなあたしを置いてきぼりにせず、手を引いて歩いてくれる。


やっと上を向けるあたしは、風に吹かれ流れる雲を見て、


「ゆっくり…」


そう呟いてみる。


そうなんだ。


迪也くんの言うゆっくりは、あたしの歩調に合わせてくれているからで。


他の誰とでもない、あたしと迪也くんの歩幅。
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