涙のスイッチ
脇目もふらず、あたしは駅まで走った。


迪也くんは追ってきてくれない。


百合子先輩の言葉が耳から離れない。


あたしはやっぱり迪也くんに何一つしてあげられる事ができない足手まとい。


そうなんじゃないか、って。


心のどこかで思ってた。


練習中、どんなに苦しくても頑張ってる迪也くんを励ます事もできないし。


どんなに暑くても、汗ひとつ拭いてあげられない。


喉が渇いてもスポーツドリンクを手渡す事だってできない。


ただ電話で


「頑張ってね?」


「ケガしないでね?」


って、わかったようなフリをして、本当は迪也くんの野球に対する熱意も努力も何一つわかっていない。
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