涙のスイッチ
「オレは泣かせたりしない。美和ちゃんだけを見る、美和ちゃんだけを大事にする。アイツへの想いを今すぐ断ち切れとは言わないから、だから少しずつでいい、オレを見て?」


この声は迪也くんじゃない。


この胸は、この唇は迪也くんじゃない。


なのに、あたしは。


今のあたしはすぐに手に入るこの人を、旭くんを。


「うん…。旭くんと一緒にいる…」


形をなくしたココロで頷いた。


「美和ちゃん、ゲット♪オレ、美和ちゃんを笑わせるから。一緒にいるから。楽しい事いっぱいしよ?毎日バカみたく騒いでさ、すぐにアイツの事なんて忘れさせるから。なっ?」


「あたし…」


「うん、美和ちゃんはオレのカ・ノ・ジョ」


今は旭くんの言葉が響かない。


けど、いつか。


そう遠くないいつか、あたしは旭くんと笑ってられる日が来るかもしれない。


迪也くんを忘れて。


あたしは旭くんの隣にいるんだ…。
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