涙のスイッチ
もう、戻れないよ、ね…。


素直になれなくて、つまらない意地張って、迪也くんに目隠ししてしまったのは。


他の誰でもなく、あたし自身。


心の奥ではずっと迪也くんを想ってた。


旭くんが笑わせてくれても、キスしてくれても。


なのにどうして突き放してしまったの?


どうして“ごめんなさい”って言えなかったの?


どうして「好き」の一言が言えなかったの?


そう。


あたしは。


迪也くんが、好き。


大好き。


旭くんじゃなく、あたしが求めているのは。


北海道で逢ったあの日から。


ずっと迪也くんの全部が欲しいのに。


なのに終わらせてしまったのは、あたし自身。


「同じ道なんて歩けない」


そう言ったのは、あたしの方。
< 160 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop