涙のスイッチ
「美和ちゃん」


「ん…。なぁに?」


「ちゃんとこっち見て」


「うん…」


真っ直ぐな瞳が迪也くんと重なってしまう。


今更何を想ったって、もう手遅れなのに。


「あのさ、美和ちゃん」


「うん…」


「オレ、頑張って傍にいれば、美和ちゃんをつかめると思ってた。

一緒に弁当食ってさ、思いっ切り遊んでさ、空元気もいつかホントの元気になると思っててさ。

好きだ、ってキスすれば1㎜づつでも美和ちゃんが近くなると思ってたんだ。

嫌いか好きか、って聞いたら、多分美和ちゃんは好きの方をくれると思うけど、それは友達の範囲内で。

でも、恋ってカテゴリーの中には、オレは入れない。

その壁を越えられるのは、オレ、スゲー悔しいけどやっぱアイツだけで。

でも、そんなアイツを想ってる美和ちゃんがオレはまるごと好きなワケで。

だから正直、このままアイツを想ってる美和ちゃんを欲しいと思うけど、それは美和ちゃんにとって幸せじゃないんだ。

オレは幸せそうに笑う美和ちゃんがもう一度見たいよ。

幸せってさ、もらうばっかじゃなくて、自分で作る方法もあると思うんだ。

前見て、笑って、告げるべき言葉を告げる。

で、それが叶うかどうかオレにはわからないけど、心の空白は埋められると思うんだ。

吐き出せた言葉は、ちゃんと胸のおさまるべき所におさまって、それは幸せって形で残るんじゃねーのかな。

想いを、恋を、ありがとう、って。

少なくとも、オレはそうなんだ。

美和ちゃんの心はもらえなかったけど、好きって気持ち、サンキュって思ってる」


「旭くん…」
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