涙のスイッチ
「旭くん」


「ん?」


「いっぱいごめんなさいと、いっぱいありがとう」


「うん。オレ、美和ちゃんを好きになれて良かった。じゃあな!」


旭くんは軽く手を上げ、笑って行ってしまうけど。


その笑顔はあたしが苦しめた笑顔。


どんなにごめんなさいしても償えない辛さだけを残してしまった、あたしと旭くん。


それでも旭くんは言ってくれた。


“好きになって良かった”って。


迪也くんと出逢わなければと思ってたあたしの想いとは逆の、前向きな旭くん。


彩菜がくれた“ぶつけなよ”。


旭くんがくれた“好きだって言えよ”。


あたしは大切な友達に背中を押してもらえる。


それがどんなに幸せな事か、今のあたしならわかるような気がした。
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