涙のスイッチ
「もう、みんなビックリしたのよっ。美和ちゃんに何かあったら…ママ…」


そう言って泣き出すママの肩をおじいちゃんが抱いた。


「そう一気にぶつけるな。美和だってまだ熱が高いんだ。もう少しゆっくり寝かせてやるといい」


熱…あるんだ…。


「そうね、お父さん。わたし、美和ちゃんの目が覚めたら急に…。美和ちゃん、まだ寝てるといいわ」


「うん…。あ…ねぇ、あたしのバッグは?」


薬のたくさん入ったバッグ。


「バッグ…。さぁ、迪也くん、何も持ってなかったけど?」


ママやおじいちゃん達の目には触れてないんだ。


見られたら、また余計な問題が起きる。


自分でやった事だけど、やっかいな話になるのは面倒だった。


「そっか…。うん、いいの。あたしの気のせいかもしれないから」


「そう。ママ達、茶の間にいるからいつでも声かけてね?熱がもう少し下がるまで眠るといいわ」


「うん、ありがとう。ママ、おじいちゃん、おばあちゃん、心配かけてごめんね?」


ママは泣きながら笑って床の間の襖を閉めた。


あたしはまた深い眠りに落ちた。
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