涙のスイッチ
「ハイ、美和。お粥できたわよ?」


「うん、おばあちゃん、ありがとう」


昨日の鍋焼うどんより、ずっと美味しい気がした。


体だけじゃなく、心までぬくもる。


ちゃんと食べて、ちゃんと寝て。


ちゃんと話して、ちゃんと向き合って。


人はそうして生きていくんだ。


「おばあちゃん、ごちそうさまっ」


食器を台所へ運ぶと、あたしはパジャマのまま、コートをはおった。


「美和、どこに行くんだ?」


「ジョンに、お礼言ってくる」


「あら、でもまだ熱あるんでしょ?」


「平気。すぐに戻るから」
< 34 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop