涙のスイッチ
玄関を出ると、ジョンが尻尾を大きく振り、あたしの顔を舐めようとする。


あたしはジョンの大きな背中に抱きついた。


「…っ…っ…。ごめんね、ジョン。ごめんね。助けてくれてありがとう、ジョン」


「ワンッ!」


お利口なジョン。


雪の中で眠るあたしを助けようと、きっと必死に吠えながら誰かを探してくれたんだろう。


その誰かが。


羽生 迪也くんだったんだ。


薬を隠してくれたお礼も言わなきゃならない。


風邪が治ったら、ちゃんとご挨拶に行こう。
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