涙のスイッチ
すぐに部屋に戻って、スーツケースに必要最低限の衣類と、買いためてあった風邪薬を詰め込んだ。


ママと一緒に家を出て、マンションの鍵を閉めてタクシーに乗る。


行き先を運転手に告げる以外、お互い何も言わず、灰色の街をただ眺めていた。


北海道に行く。


もうこの街に戻って来る事はないのかもしれない。


漠然とした不安と、北海道で何もかも全て終わらせる事ができるかもしれないという空虚な気持ちを乗せて、飛行機は色のない空を飛び立った。


「サヨナラ…」


心の中で呟いて、あたしは浅い眠りについた。
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