涙のスイッチ
迪也くんとの時間と空間はドキドキしっぱなしだけど、居心地がいい。


もう少し声が聞きたい。


もう少し一緒にいたい。


初めて想うこの感情は…やっぱり…。


でも、あたしは気づく寸前で目隠しをしてしまう。


だって怖いから。


迪也くんにとってあたしは、きっと見放しておけない子犬みたいなモノで。


東京へ出てしまえば新しい環境の中で馴染む事が優先で、あたしみたいなわずらわしいコの事なんて、すぐに忘れてしまうはず。


でも、それが多分正解で。


迪也くんには進むべき道を真っ直ぐ歩いてほしい。


野球という迪也くんが選んだ道を。


だからあたしは自分のココロに蓋をする。


鍵をかける。


後で傷つかないように。
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