涙のスイッチ
話したい事が、いっぱいあった。


親友の彩菜も同じ高校に受かったから嬉しい、とか。


新しい制服がかわいい、とか。


入学祝いにおじいちゃんから時計を送ってもらった事。


なのに。


言えない。


すごく苦しくて大きく息を吸えない。


だけど甘くて酸っぱくて、それを味わえる事が喜びで。


でも、独りよがりなこの気持ちを持つ淋しさみたいのもあって。


握ったこの手はすぐにほどけてしまうものだってわかってるのに離してほしくなくて。
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