風少女



空は青く、雲は一つも見当たらない。

太陽が僕らをてりつけた。


「あついわ」


葉月がそう不満な声を漏らす。


「そりゃ…ね」

「どうしてこんなに暑いの!」

「んなこと言われても」


クールな葉月が取り乱すほど、今日は異常に暑かった。

ギャルはメイクが崩れて恐ろしい。



「……あ、あのっ、花音さん!」

「?」

「わ、わ、私っ、濱中美和っ……こ、これっ、よかったら!」

「あ、ありがとう」



顔を真っ赤にさせて葉月に差し出されたものは、スポーツドリンク。

…この子、間違った方向に行きはしないだろうか?


「はわわわわっ……」


濱中さんは顔を真っ赤にさせて、走り去って行った。



「濱中…美和、か……」


葉月はその名を呟き、それ以降口は開かなかった。

時折、彼女のくれたドリンクを飲むだけだった。
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