†導かれる聖女†


「…っく!?」

「それ以上…言葉を吐くな。こいつへの冒涜は俺が許さない」


紅い瞳を怪しく光らせ、ルークはティアネイを睨みつける。


「お前っ…ヴァンパイアか!?」


ルークの牙を見たティアネイは驚き目を見開く。


「ルーク!!
落ち着いて…大丈夫だから!
彼はとても深い悲しみを負っているの…
それ故の態度だよ…」


今にも殺してしまいそうだったのでルークを必死に宥める。


「お前……」


ティアネイは驚いたように私を見た。


ルークはゆっくりとティアネイから手を離し、そっぽを向く。


「ティアネイ、もう気付いているかもしれないけれど…
私達は貴族では無いわ。
旅をしている者なの」


「その交通手段にこの船を使っただけだ」


私の言葉の続きを、ルークが続ける。


「…私は、魂と言葉を交わす事が出来る。それから…その魂の記憶を見る事も…」


その言葉にルークは疑うような瞳を私に向けた。


「その話を信じろと?」


その言葉にルークの目の色が変わった。


「貴様っ!!!」

「ルーク!!!」


私は必死にルークの腕を両手で掴み襲い掛かろうとするのを止める。


「…レイナ・フランソワース。彼女は貴族であなたは平民。遠く離れた地で生まれ、互いの両親が仕事で接点を持った事から二人の交流は始まった…」


私が語り出すとルークは瞳を閉じ、私の言葉に耳を向けた。


ティアネイは驚きで言葉を失っている。それでも話しを続ける。


「何年かぶりに訪れた彼女に言われたのは共に絵を描き、仕事にする事。それは…彼女を愛していたあなたにとって、身分も何も関係無しに彼女の傍にいられる、とても素敵なお誘いだった」


それは童話のように、吟遊詩のように私の口から語られる。


「二人で共に夢へと旅立ったその日、悲劇は起きた。死神は船にいた人間達を襲い、自らの糧とした。
あなたを守ろうと彼女はあなたを海へつき落とす…
最後に見たのは…
彼女の笑顔だった……」


そこまで語って気付く。自分の頬には涙が伝い、ティアネイの頬にも、涙の跡がある事に…








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