†導かれる聖女†


「素敵な事ね…………
誰かを愛し慈しむ事は
とても美しい事………」


私にはきっと知る事が
出来ない感情。


「お前にはいないのか?」


ルークの質問に私は
苦笑いを浮かべる。


「大切な者は全部……
失ってしまったから…」


この手を滑り落ちるようにサラサラと私の前から消えていく。


ねぇどうして……?
私の前から消えていくの?


「セシル………」

―フワッ

「…っ…………」


ルークは私を抱きしめた。優しく強く…私の不安を消し去るかのように…


「皆…いなくなっちゃう…
私はまた………」


一人ぼっち……


「俺がいるだろう?
お前は孤独じゃない」


ルークの言葉に私は
無言で首を振る。


それは…今だけでしょう?
契約が終えればあなたは…


「私は…いつも孤独よ…
だからあまり…優しくしないで…。離れられなくなっちゃうから…」


ルークの胸にしがみつきながらそんな事を言う私は矛盾している。


本当は優しくされたいのに…








< 150 / 207 >

この作品をシェア

pagetop