†導かれる聖女†
*吸血鬼ルーク


「セシル!!!!」


ルークは私に手を伸ばす。私も同じように手を伸ばした。


「ルークっ!!!」


互いに手を伸ばし合い指先が触れ合う。


「…チッ……
もう少し手を伸ばせ!!」


無表情のルークが今は必死に私に手を伸ばしている。


だから…
私はルークに笑顔を向けた。



「大切な人が待ってるのでしょう?」


地面が崩れて行く中、私はルークに落ち着いた声をかけ、微笑みかける。


「私と共に堕ちれば…
あなたも大切な人を失ってしまう…私はもう二人も失ってしまった。だから…あなたには…」



失って欲しくない。
悲しんで欲しくない。
後悔させたくない。


「何言ってるんだ…お前は…
今はそんな事を言ってる場合じゃ…………」


私は今力を物凄く消耗している。だから……
私があなたにしてあげられるのは……


「聖女マリアの名において此処に拒絶の包囲を施さん」


私の力が発動し、光がルークを包み込む。


「セシル!!?
お前っ…何を!!?」


ルークの落下は止まり、私の体だけが堕ちて行く。


「行きなさい。
ヴァンパイアルーク…
あなたにはあなたの目的があるのでしょ!!!」


魔を、魔に関するモノを全て拒絶し受け入れない護りの力よ……


「セシル!!!!」



ルークは私に精一杯手を伸ばそうとしている。


それが何故か嬉しかった。無表情の中にも確かに情があった事を感じたから…




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