†導かれる聖女†


「帰るぞ…セシル…」


ルークは剣を握るセシルの手に自分の手を重ねた。


ビクッとセシルが震える。


「大丈夫だ。だから…泣くな」

「あ…あ……」


視界が透き通っていく。
目の前で血を流すルークが鮮明に見えた。


「…私は…何…を……?」


自分の手を見ると、血の滴る剣があった。


その先はルークの腹部を深く突き刺している。


―ポタンッ


また私の手を伝い血が流れた。


「私は…あなたをっ…」


私はルークをっ…!?
そんなっ…私はどうしてっ…


「嫌っ…嫌っ……」


咄嗟に剣を離し、2、3歩後ずさる。


「っ…」

―グシャッ!!


ルークは自身から剣を抜き、剣を投げ捨てた。


「っ…嫌っ……」


私はっ…私はっ……


顔を覆おうとして自身の手が赤い事に気づく。










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