†導かれる聖女†


「…何を迷う」

「…私の名前…
沢山あるから………」


一瞬呆気に取られた彼だったが私の暗い顔に気付いて彼は優しく問い掛ける。


「お前が好きだと思う名前でいいんじゃないか…?」


私が…好きだと思う名前…


『セシル…すまない…』


セシル…
セシリー・ルミエール…


この名前はリドムが私に付けた名前だった。


この教会に生まれ、母も父も知らない私に贈られた名前…


リドムは私の父のような者だったから…


この名前を愛しいと思う…


「セシリー・ルミエール…
みんなは…セシルって呼ぶ…から…」


そう言えばルークは
無表情を崩し優しい笑みを浮かべた。


「…セシル……」


この名前を誰かに呼ばれたのはリドムを含めて何年ぶりなのだろうか…


だから私は…
小さく笑顔を返した。


そして二人の旅が始まり…
運命は急速に加速する…








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