†導かれる聖女†
「…そんな…私は…」
私はルークみたいに短剣を操るのも上手くないしましてや人を喜ばせるモノなんて……
そこまで考えてハッとする。一つだけあった…
誰かを喜ばせる事が出来たモノが一つだけ…
大きく空気を吸い込み瞳を閉じる。
私が唯一…誰かに誇れるモノなんて…
最初からこれしかなかったんだ…
「♪〜♪〜♪〜
慈しむ世界
今私がすべき事は何?
戦いに勝つ事?
犠牲になる事?
真実を見て 見逃さずに
今私がすべき事は何?」
その場が静まり返る。
聴き入る人達の視線を感じる。
それでも私は…
―歌い続ける
「誰かを救えるのは
自分を犠牲にしない人
私が出来るのは
中途半端な優しさじゃない
自分の意思で
自分の足で立って歩いて
その勇気を
持てるように…歌うよ
♪〜♪〜♪〜」
例え音楽が無くてこの声だけが唯一の音となったとしても、きっと歌声は届く。
歌を終えてお辞儀をすると、パチパチと拍手が聞こえる。
顔を上げると…
「えっ…泣いて……?」
観客はみんな涙を流して拍手をしていた。