†導かれる聖女†


「…………セシル…
休んでいろ」


口端に血を付け、私を無表情に見下ろすルーク。


その無表情の中には、ちゃんと心配そうな瞳があった。


「お願い…アデルを…」


それから意識を失った。




意識を失ったセシルを、ルークは無言で見下ろす。


「…聖女か……
セシル…お前は何故他人の命に敏感で、自分の命に疎い。俺は…お前が聖母に見える…」


腕の中に眠るセシルのおでこに、ルークはそっと口づけを落とす。


「…契約において、お前の心を守ろう」


それからセシルを危険の無い場所へ横たわらせ、漆黒の剣を握りしめる。


「…終幕だ…アンデット」


ルークはアデルへと迷う事無く切りかかった。







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