†導かれる聖女†
命の灯が消えようと
しているのが分かる。
もうすぐ彼は息絶えるのだろう…
それが何だか寂しく思えた。彼の瞳は何故か…
とても綺麗だったから…
その残酷な瞳に魅入られ
ていたのかもしれない。
「…生きたいの…?」
だからそんな事を
尋ねてみる。
聖女あるまじき行為だと
知っていてもそう言葉を繋ぐ。
「生きたいの…?」
そんな私を彼は生気のない瞳で見上げる。
「…今はまだ……
俺には…行かなければ
ならない所がある…
だから……死ねない……」
あぁそうかと納得する。
その命の灯はすでに
無いに等しいのにまだこちら側に魂が残っている。
それほどまでに叶えたい
願いなのだろう…
「…なら取り引きを
しましょう…」
取り引き…
私の願いを叶えられるのはもはや吸血鬼である彼以外にはいないだろう…
だから取り引きをする。
私の願いは……
「私を此処から連れ出して」
もっと自由な世界へ
そして…
私の行くべき場所へ
連れ出して…