†導かれる聖女†


「あなたの傍で言葉は無くても見守ってくれた人、あなたが罪を犯しても最後まで味方でいてくれた人…
本当にあなたにはいなかった?」


その命を終えるその時まで…
傍にいて見守ってくれていた人……



私にリドムがいたように、アデルの傍にいた人…
肉体を失ってもなお、魂のまま彼の傍にいた人…


『……父サン……』


アデルは小さく、それでも確かにそう呟いた。


「ほら…あなたにもちゃんといた…。あなたの傍にはお父様がいてくれた。
それがあなたが気づけなかった愛の形…」


近くにありすぎて、そして愛情から遠かった私達の大きな罪…


『父サン…父サン…』

「…アデル……」


何度も大切な者の名を呼ぶアデルに、私はそっと触れる。


アデルはビクッと肩を振るわせた。


「…………もう大丈夫…
あなたはちゃんと愛されていたよ…」


そういえばアデルは一度目を見開き、笑顔を浮かべた。


『…愛サレテタ…ボクは…愛サレテタ……』







< 82 / 207 >

この作品をシェア

pagetop