†導かれる聖女†


『…僕ワ…大切ナ者ヲ殺シテシマッタ……
戻ッテハコナイ…悲シイ…痛イ……』


アデルはガタガタと震え、自分の体を抱きしめた。


「…そうだね…
気付いた時にはいつも、後悔ばかり…
でも後悔は何にもならない。あなたも輪廻の輪の中に還りなさい。そしてもう一度、あなたが大切な者の元で愛されて生きる事を私は祈るから…」


それから祈りを捧げるように両手を合わせ、瞳を閉じる。


目の前の罪深き魂へと名を贈る。彼にも幸せになる権利があるから…


「聖女マリアの名において…
汝に名を与える…
チャリティア…意味は…慈愛。あなたの来世が、全ての者を慈しみ愛せるくらいあなたも愛される幸せが訪れますように……」


それからアデルをもう一度抱きしめた。


『僕ハ幸セニナッテモイイ…?』


肯定の意味で頷くと、アデルは涙を流し笑みを浮かべた。


「次に生まれ変わる時は…
あなたが世界中に愛されて慈しまれている事を忘れないで。人はこの世に生まれ落ちた時、必ず愛を受ける…
それを忘れずに旅立ちなさい」


『アリガトウ…サヨナラ聖女様……』


「神の権限において…
魂の送還をっ!!!」


―ピカアァァッ!!!


光が弾け、アデルを包み込む。アデルの魂は導かれるように天へと昇った。


「……汝の旅に…
神の御加護があらん事を…」


両手の指を絡ませ、祈りを捧げる。


「…アデル…どうか幸せに…」


もし来世で出会えたなら…私はあなたの幸せな姿を見たい。









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