†導かれる聖女†


「ルーク…怒って…るの…?」


ルークの腕の中、途切れそうな意識を必死に繋ぎ止め、顔を上げる。


「……………さあな…」


ルークは無表情だ。だからその瞳に隠れる感情を読み取るのは難しい。


「…ルークは……
難し……い……だから…
少しずつ…知って…きたい」


あなたを知りたい…
何を慈しみ、護るのか。
何を愛し、望むのか……


初めて自分から知りたいと願ったモノ…………



―プツン

そこで意識が途切れた。温かいルークの温もりの中で…



「眠ったのか……?」


自分の腕の中で、穏やかな表情と規則正しい寝息が聞こえた。


一筋の風がセシルの金色の髪を美しく揺らす。


「…俺も……
俺もお前を知りたい。
お前が何を護り、何を望むのか…
何に悲しむのかを……」



ルークは眠るセシルを優しく抱きしめ、持ち上げる。


「…俺の旅が終わるその時までは…お前の傍にいる。それが…契約…だからな…」


契約だから……
それが交わされた契り…


本当にそれだけか…?


考えるように空を仰ぐ。
答えは…


「…それだけだ…」


自問自答をしてからセシルに視線を戻す。


「それだけだ…」


それからもう一度そう呟き、廃塔を出た。






< 85 / 207 >

この作品をシェア

pagetop