†導かれる聖女†
「ルーク…怒って…るの…?」
ルークの腕の中、途切れそうな意識を必死に繋ぎ止め、顔を上げる。
「……………さあな…」
ルークは無表情だ。だからその瞳に隠れる感情を読み取るのは難しい。
「…ルークは……
難し……い……だから…
少しずつ…知って…きたい」
あなたを知りたい…
何を慈しみ、護るのか。
何を愛し、望むのか……
初めて自分から知りたいと願ったモノ…………
―プツン
そこで意識が途切れた。温かいルークの温もりの中で…
「眠ったのか……?」
自分の腕の中で、穏やかな表情と規則正しい寝息が聞こえた。
一筋の風がセシルの金色の髪を美しく揺らす。
「…俺も……
俺もお前を知りたい。
お前が何を護り、何を望むのか…
何に悲しむのかを……」
ルークは眠るセシルを優しく抱きしめ、持ち上げる。
「…俺の旅が終わるその時までは…お前の傍にいる。それが…契約…だからな…」
契約だから……
それが交わされた契り…
本当にそれだけか…?
考えるように空を仰ぐ。
答えは…
「…それだけだ…」
自問自答をしてからセシルに視線を戻す。
「それだけだ…」
それからもう一度そう呟き、廃塔を出た。