†導かれる聖女†
「何があった?」
私の肩を強く掴み問いただすように揺さぶる。
「…声が…聞こえたの…
狩りが…狩りが始まる前に…
此処から…っ…」
頭がズキズキと痛む。どうして…これは何の痛み?
『早く!!!』
「声がっ…」
…酷いノイズ…
意識も朦朧としてくる。
「しっかりしろ!!
声って何の声だ?」
「わから…ない…
声が…ただ逃げろ…と…」
―プツンッ
そこで意識が途絶えた。
「…セシル……
何でお前ばかりこんな目に…」
本当の意味での安らぎを
こいつは知らない…
今も…そしてこれからも…
こいつが聖女で在る限り、力を持つ限り…
腕の中で眠るセシルを強く抱きしめる。
細くて軽いその体は長く人の温もりに触れなかった体だ。
これから先…
運命は何度もセシルを傷付けるのだろう…
俺に出来る事は数少ない。俺はこいつに…命を救われたというのに…
腕の中に眠るセシルをもう一度抱きしめて、額に触れるだけのキスをした。