†導かれる聖女†


―――――――――
―――――――
―――――


『レイナ!!!
頼むよ…目を開けて!!』


何度も何度もレイナの肩を揺さぶる。
それでもレイナは目を覚まさない。


レイナの胸から流れる血を、必死に止血する。


『止まらない…
どうして止まらないんだ!!』


どうして…レイナが
こんな目に……




『………っ…ゴフッ…
ティア…ネ…イ…』


俯いていると、愛しい人の声が僕を呼んだ。


バッと顔を上げ、レイナを見つめる。


虚ろな瞳のレイナは小さく笑っていた。


『ティア…ネイ…
私…は…大丈夫……
あなたは早く…此処からっ…』


苦しげに胸を押さえ、レイナはそれでも笑みを作る。


『嘘つき…』


レイナが嘘つく時は必ず
笑顔を作る。
本当は苦しいくせに
無理に笑って……


『レイナを一人になんてしないよ。一緒に逃げるんだ』



レイナを横抱きにして
甲板まで上がる。


大丈夫…まだ見つかってない。レイナを抱えたまま非常用ボートで逃げれば…



そんな事を考えていた時、何かを引きずるような金属音が聞こえた。



―ギギ…ギィ…キキィ…



来た……あいつが来た!!









< 97 / 207 >

この作品をシェア

pagetop