甘きゅん【完】
イラっとして、あたしがちょっと唇を噛むと、


「あー、不便だなぁ。
右手が使えないって、本当、ツライなぁ」


感情のこもらない、棒読みのセリフが落ちてきた。


ひぃぃ!
怖いよぉ!


綺麗なものにはトゲがあるっていうけど、本当だよぉ!


この人、綺麗すぎてトゲトゲだよぉ!


チラッと盗み見た生徒会長の目の半開き加減に恐れをなし、


「はい、はい、すみません。
ちょっとボーっとしちゃっただけですよぉ!
すみませんねぇ、ドジっ子で。
生徒会長様が読まれたいのは、どの本ですか?」


精一杯へりくだったあたしに、


「は?
昨日の続きに決まってるだろ、このドアホ!」


容赦のないトゲが刺さる。


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