甘きゅん【完】



「違う!
やり直し」


あたしの家のアパートが丸々入りそうな広い九条家の玄関で。


「お…かえり…なさいませ…
い…ぶき…さ…ま」


「だから、違う!
おかえりなさいませ、伊吹様、だろ?
やり直し!」


見ようによってはエロいメイド服で、指導という名のいじめを受けているあたし。


つーか、言えるか!
そんなセリフ!!


頭を下げた前髪の間から、九条くんをキッ!と睨み上げると、


「気にいらねぇなぁ」


そんなどす黒いオーラに包まれたセリフが降ってきた。

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