恋する事件簿【完】
「きっと、火事の時の影響というか、後遺症かも知れません。頬の火傷は、神経を少し傷付けてると、カルテにはありますから。
午後には目薬が届くように手配して置きますけど、視力も落ちてると思われます」



「…わかりました。お願いします」



私は医務室を出て、トイレへと入った。

手洗い場の鏡の前で、誰も居ない事を確認して、マスクを外した。

母親の腕の痕に似た皮膚。

再生しない。

感覚はない。

毛根もない。

メイクでは隠せない。

…この傷が…。

この傷がなければ、意地でも那維斗と居たと思う。
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