恋する事件簿【完】
でも、マスクなしでいられない女と、誰が居たいと思う?

きっと、誰も居ない。

私は涙を自分でも隠す為に、顔を洗った。

深呼吸をし、マスクを嵌めて課に戻る。



「ちょうど良かった。芽依実に電話が入ってるよ」



「誰から?」



「それが言わないの」



私は母親と首を傾げ合いながら、受話器を取った。



「もしもし。山下ですが…」



『私、根岸ーネギシーと申します』



「…“根岸”さん…」



『きっとご存知ないですよね。長官の秘書です』



思いがけない人からの電話。

この電話に寄って、私たちの時間は正確に回り始めた。




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