恋する事件簿【完】
第3部 ⑦〜愛情〜
「手ぶら…?」
玄関に立ち尽くす私。
リビングに「あぁ」と、平然と行く那維斗。
今日は私の27歳の誕生日。
今となっては、喜ぶような歳ではないけど、何かあっても良かったんじゃないだろうか。
ため息を吐き、諦めてキッチンへ行き、温かいコーヒーを淹れる。
那維斗は小雪が待っていたせいか、濡れたダウンジャケットをハンカチで拭く。
「道、濡れてた?」
「段々、本降りになって来たで」
スリップ事故が起きて、刑事課も駆り出されそうだ。
私は両親から貰った誕生日プレゼントのセーターの袖を少し伸ばして手を包んだ。
ストーブの傍に行き、寒さを凌ぐと、「独占すんなや」と、注意を受ける。