恋する事件簿【完】
「お前にしては、上出来やな」



「それはどうも」



先に車で待ってた難波。

煙草を一本欲しがる為、「吸うなら買えば良いのに…」と、グチグチと言いながら、渡した。



「看病して貰っといて、随分と偉そうやな」



「余計なもん、見せたくせに…」



睨み合い、私が目を逸らそうとした瞬間、ふわっと難波の香りを纏った風を感じた。



「……」



「無事で良かったわ」



「…え、何、今の…」



“無事”とは、事故の事だとわかる。

しかし、唇に残る感触は、なんだろうか。

難波は何事もなかったように、窓枠に肘を置き、煙草を吸ってる。
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