恋する事件簿【完】
 *  *  *
―那維斗 SIDE―



「酸っぱい臭い。これはただのスプレーとかじゃない」



先を歩く芽依実の母親。

野神刑事が呟いた。

人より優れた嗅覚。

目と鼻も強い。



「芽依実、どうしたと思う?」



旧舎へと繋がる渡り廊下に出て、新鮮な空気を肺に取り入れた瞬間、俺へと振り返って来た。

…“どうしたと思う”?



「何で俺に訊くんですか?」



「隠さなくて大丈夫。キスしたの見ちゃったし!付き合ってるんでしょ?」



…バレてる;;



「昨日から」



「そう、昨日からなんだ。2人の会話は、前からのようにも思えたけど」



野神刑事が旧舎を見ながら言う。
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