何度も…何度でも君に恋をする

回転扉に1人ずつ入ってラウンジに向かった。

お父さんの傷ついた顔を思い出したら怖くなって、足がだんだん重くなっていく。


お父さんが怒ってたら…。

私のせいで琴美さんと上手くいかなくなってたら…。


怖くて怖くて…下唇を噛み締めた時、奏くんが振り向いて手を出した。


「…?……奏くんどうし…」

「手……ええから手出して!」

「手?……う…うん…」



奏くんが私の右手首を掴んだかと思うとヒヤッと冷たい物がついた。

真っ青な……海の色した石のブレスレット。



「この石知ってる?……ラピスラズリって言ってな、幸運の石なんやって」

「幸運の…?」

「うん。…進む道に迷った時身につけると良いんやで。自分にとって正しい方向に導いてくれる…幸運の石…」

「………」

「華凛ちゃんに貸すねんから…勇気出して行こ!」




道に迷った時……

正しい方向へ導く……




ピカピカ光るラピスラズリが私の右手で叫んでる。


“頑張って” “大丈夫”


奏くんの顔を見上げたら…、口の端だけ上げてニッて笑った。

もう1度ラピスラズリを見つめて、静かに深呼吸をする。



「……うん……行こ…」



私より先に歩く奏くん。

その頼もしい背中を追いかけて、彼と一緒に…ラウンジに足を踏み入れた。







< 56 / 154 >

この作品をシェア

pagetop