Loss of memory ーアルコバレーノの奇跡ー
記憶のない少女
太陽が傾き、日が暮れる頃。
「キルト様、人が倒れております」
キルトと呼ばれた男は、数メートル先に目を懲らした。
すると、確かにそこには髪の長い少女が倒れている。
ゆっくりとそちらに近づき、キルトは少女の手前で足を止めた。
「酷い傷だな……」
少女の身体中に切り傷が多くある。
深いものから浅いものまで。
服の上から確認出来るだけでも15ヵ所ほどある。
呼吸は荒々しく、顔も赤く染まっていた。
「キルト様、まだ生きております。手当ての許可を頂けませんか」
キルトのそばにいた男は、少女の心拍と呼吸、傷を確認する。
「あぁ。フラウ、急げ」
「はい」
フラウは近くにいた男から救急箱を受け取ると、テキパキと治療をしていく。
消毒をすると、少女はたまに顔をしかめた。
「どうだ」
「……大丈夫です。まだ傷を負ったばかりのようで、倦んでもいません。これなら深いものでも、傷は残るかもしれませんが治ると思います」