Loss of memory ーアルコバレーノの奇跡ー
「そうか」
「ですが………」
フラウは顔をしかめた。
「どうした」
「はい。傷は致命傷ではありませんし、問題はありません。
しかし、熱が酷く高い。呼吸も荒々しくはありますが、弱い。このままだと………」
「死ぬ、か」
「はい。彼女をここに置いてくのはかなり危険だと……」
フラウはキルトに向いていた視線を、少女に戻した。
彼女は一体何者……??
こんな大傷を負って倒れているなんて、普通の民じゃない。
それに、彼女からは────…
「なら、城に連れて帰ろう。部屋なら余りまくってるだろう」
「よいのですか??彼女は、身元もわからない一般人ですよ??」
「怪我をして体調を崩した女を放っておくわけにもいかないだろ。俺が許可するんだ、文句はないはずだ」
「はい。キルト様。では城まで急ぎましょう。詳しく検査する必要があります」
キルト、フラウ、そしてその周りにいた男は先ほどよりもペースをあげで、城へと戻った。