Loss of memory ーアルコバレーノの奇跡ー



───…


ツンッと、医薬品の匂いがする。

消毒液の香のような……


そんな匂いで私は目を覚ました。



「………ここ、どこ……」



私はタブルベッドに寝かされていた。
目を開けて一番にみえたのは、真っ白な高い天井。

そして、次に私が感じたのは傷の痛みだった。



「いたっ………」



あれ、なんで……私………


カチャッ


いきなり扉が開いた。



「あぁ、起きたみたいだな」



入ってきたのは、漆黒の黒い髪に黒い瞳の男。

高く筋の通った鼻。薄い二重に薄い唇。
程よい白さのきめ細かい肌。

高い身長。


一瞬で人々を魅力する美しい男だった。



「あ、あの……」



誰ですか??と聞きたい口を閉ざす。

こういうときは流れに身を任せるべきだと、直感でわかった。



「フラウ、あいつが起きてる」



さっきの男がフラウと呼ぶと、一人の男が横から現れた。



「本当ですね」



そう、微笑んだ。

彼は茶色の髪に茶色の瞳。もう一人の方ほどではないが、高い身長に整った顔をしていた。



< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop