Loss of memory ーアルコバレーノの奇跡ー
───…
ツンッと、医薬品の匂いがする。
消毒液の香のような……
そんな匂いで私は目を覚ました。
「………ここ、どこ……」
私はタブルベッドに寝かされていた。
目を開けて一番にみえたのは、真っ白な高い天井。
そして、次に私が感じたのは傷の痛みだった。
「いたっ………」
あれ、なんで……私………
カチャッ
いきなり扉が開いた。
「あぁ、起きたみたいだな」
入ってきたのは、漆黒の黒い髪に黒い瞳の男。
高く筋の通った鼻。薄い二重に薄い唇。
程よい白さのきめ細かい肌。
高い身長。
一瞬で人々を魅力する美しい男だった。
「あ、あの……」
誰ですか??と聞きたい口を閉ざす。
こういうときは流れに身を任せるべきだと、直感でわかった。
「フラウ、あいつが起きてる」
さっきの男がフラウと呼ぶと、一人の男が横から現れた。
「本当ですね」
そう、微笑んだ。
彼は茶色の髪に茶色の瞳。もう一人の方ほどではないが、高い身長に整った顔をしていた。