Loss of memory ーアルコバレーノの奇跡ー
フラウという男がこちらに近づいて来る。
私の手前で立ち止まり、一礼をした。
「はじめまして。私、ここでキルト様の執事をさせていただいております、フラウと申します」
「はじ、め…まして……」
「あなた様のお名前を、お聞かせ頂けますか??」
フラウさんが、微笑みながらきいてくる。
私は慌てて自分の名前をいようとした。
「あ、私の名前はっ……………名前??……私の………名前??」
あれ………
「どうかなさいましたか??」
私の名前って………何??
私って……誰??
「なん、で………」
声が震える。
「え??」
「私……誰??
わかんない…。なんで、自分の名前がわからないの?!
私は誰?!私は何?!
わからない……わからない!!」
なんでなの?!
自分に対しての記憶が、何一つわからない。
ねぇ、私は………どうしたの??
私は頭を抱え込んだ。
「キルト様……」
「あぁ。記憶喪失だろうな」
「どういたしますか??」