Loss of memory ーアルコバレーノの奇跡ー
「………これじゃあ城下に帰すのも無理だな」
「はい」
「………お前はいったん下がれ。コイツと話をする」
「わかりました」
フラウは、また一礼して直ぐに部屋から出て行った。
そして、今度は逆にキルトと言う男がそばにきて、ベッドの端に座った。
近くで見ると、もっと素敵な男だ。
「……お前は、人気のない道に倒れていた。傷や熱があったからここまで運ん出来たのだが……。
まさか、記憶がないとはな」
「………」
倒れてた??
じゃあ、この包帯とかはこの人が??
「あなたが……手当てしてくださったんですか??」
「いいや。フラウだ」
「そう、ですか……。あのっ…後で、フラウさんにお礼を言わせてください。
それに……キルトさんも助けていただき、ありがとうございます」
キルトは少し驚いた顔をしたが、今度は優しく微笑んだ。
さっきまで、ずっと眉間にシワ寄せてたのに。
あ~あ……絶対笑っていたほうが素敵なのに、もったいない。