喫茶冬景色
俺は嘘を吐かない代わりに気の利いたことも言えない無能な正直者だった。
自分の思っていることを表現するのが下手だって言うのかね?
彼女を救うような一言を言いたいのに追い込むようなことを言って。
本当に無能だ。
「うん。大丈夫。」
「もしもさ、辛くなったら言いなよ?話くらいは聞けるから。」
「うん。大丈夫。」
見た目はちんちくりんな珍獣のくせして、そんな風に上を見上げながら言う彼女のその姿勢に防弾ガラスのような頑丈さと透明感を覚えたんだ。
「・・・そう?」
「うん。」
そう頷いた彼女を見たとき、俺が感じた防弾ガラスは実はマジックで防弾ガラスですと書かれているだけのただのペットボトルでしかなく、そんなペットボトルをいくつも折り重さね、奥にある本音を濁し見えにくくしているんじゃないかって思えた。