喫茶冬景色
「…私、帰るね。」
 
「え?ちょっと、雅美。」
 
まだ、話は終わっていない。
 
「もうわかったから。わかったから。」
 
そう言う彼女は複雑そうな顔をして寒い空の元に飛び出して行った。
 
「…。」
 
彼女、俺と別れてくれるのだろうか。
 
「明弘君!久しぶりだね。」
 
コートを脱いだマスターが俺に声をかける。
 
「どうしたのフラれたの?あっはっは。」
 
どうもこの人の雰囲気は店の雰囲気に合わない。
 
店がレトロなのにこの人はバリバリの現代人だ。
 
色が黒く、子ども会の会長を務めるくらい精力的なところがそう思わせるのかもしれない。
 
ま、それがこの人の魅力なんだろうけど。
 
「えぇ。まぁ。」
 
「そうかぁ。一杯おごるよ。こっち来なよ。」
 
そう言われるがまま。
 
俺は店のカウンターへと席を移動した。
 
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