喫茶冬景色
「俺、彼女が2人目なんですよ。」
 
俺は少しだけマスターに話を聞いてもらうことにした。
 
「そう。明弘君さ、いつも一人で来ていたろ?なんで、彼女いないのかなってずっと思ってたんだ。」
 
「マスター持ち上げるのがうまいですね。俺、そんなにもてませんよ。」
 
俺はマスターから出された一杯の新作コーヒーを口に含んだ。
 
「ずっと心に引っ掛かってた人がいましてね。そういう人がいるのに他の人と付き合うのってどうなんだろうなって。」
 
「へ~?」
 
マスターはじろじろと俺の方を見つめた。
 
「ほら、いろんな人と付き合ってみたいって言うのはなかったのかい?」
 
そう言われたことに疑問はあった。
 
「付き合うって友達としてじゃだめなんですか?」
 
「あ、いや、ほら。男と女としてだよ。」
 
ない、わけじゃないと思う。
 
ただ、
 
「心に別の人が住み着いているのに他の人のところへ行くのは人としてどうなんだろって思ったんですよ。」
 
「明弘君。真面目なんだね。君、みたい人だったら浮気の心配もないだろうし父親としてうれしいかな。」
 
「俺、じゃ6歳の子とは付きあえませんけどね。」
 
「でも、同じ男としては少しさみしいかな。」
 
「え?」
 
「ほら、新しい出会いを捨ててきたんだろ?」
 
そうマスターが呟くと語り始めた。
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