喫茶冬景色
―――カランカラン――
 
玄関の鐘が鳴る。
 
ウエイトレスさんがマスターに話しかけてきた。
 
「マスター。そろそろ閉店の時間ですよ。」
 
「あ、わかりました。西川さん表閉めておいてください。」
 
「はい。」
 
 
「明弘君?君が一番好きな季節は何だい?」
 
「え?えっと、春ですかね。暖かいですし。」
 
「そう、それはよかった。この店の名前知っている?」
 
喫茶冬景色。
 
「冬景色だ。この店を立ち上げたときにね、店を訪ねるお客さんの雪解けを祈ってつけた名前なんだ。」
 
雪解け…。
 
「そう、雪解け。永遠に続く雪景色はないからね。」
 
「そろそろ時間だ、店を閉めなくちゃ。」
 
「マスターありがとうございます。」
 
そう言って俺は店を後に店外へと出た。
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