いつか君を忘れるまで
優子さんとの失敗が、相当トラウマになっているらしい。
手塚は、思いの外真剣な眼差しだ。

俺は溜息をつくと、手塚の方へ向き直った。

「お前は阿呆か?」

何か言いたそうに口を開いた手塚に構わず、俺は言葉を続けた。

「『俺のプラン』で成功してどうする?いずみちゃんとデートするのは手塚だろ?」

俺の言葉に、手塚はシュンとして俯いた。

「ありのままの自分を好きになってもらわないで、何を好きになってもらうんだ?お前らしくデートして、それで駄目なら諦めろ。」

俺は、自分でも珍しく熱くなっているのが分かった。
でも、手塚にもちゃんと良い所がある。
それを分かって欲しかった。

「俺らしく・・・ですか?」

手塚は、俯いたまま答えた。

「そうだよ。背伸びしてどうするんだ。どうせいつかボロが出るぞ?」

ハッとした様子で顔を上げた手塚は、さっきよりも輝いた目をしていた。

「そうですよね。背伸びするからいけないんだ。俺らしく、俺らしく。」

手塚は、呪文のように繰り返すと、モップ掛けに戻っていった。

「全く、世話のやけるヤツだ。」

まあ、そこが憎めない所でもある。
手塚の背中を見送ると、俺はそう呟いた。
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