いつか君を忘れるまで
俺は、向かってくる男をひらりひらりと凌いで行く。
どうやら、昔習っていた合気道が役に立っているらしい。

チラリと後の二人を見ると、煽る事もなく、ただオロオロしている。
どうやら加勢する気は無い様だ。

「もう、辞めてくんないかな?」

向かってくる男に俺がそう言うのと同時に、後ろから怒号が聞こえた。

「店の前で何やってんだ!警察呼ぶぞ!」

声の主は、コンビニの店長だった。
店長の怒鳴り声に驚いたのか、オロオロしていた二人はおろか、向かって来た男も蜘蛛の子を散らす様に逃げてしまった。

店長は俺に目配せすると、店の中へ入って行く。
すると、中からあの女の子が出てきた。

「大丈夫だった?」

動揺はしているが、彼女はしっかりとした目線で俺を見据える。

「はい。ありがとうございました。」

ペコリと頭を下げる彼女は、高校生にしては大人びているものの、やっぱりあどけなさも隠しきれていない。

それにしても、アイツに似ている。

アイツを思い出すのは苦しいが、俺は何となくまた会えて嬉しい気持ちも湧き上がっていた。
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